まだ、病院で働いていた頃の夜勤での話
やがて100歳を迎えようとしている「オバァ」が手術後の経過観察で
私の勤務する病棟にきた。
麻酔が覚めて状態が安定するまで一泊する予定だった。
術後麻酔の影響で不穏(意味不明な事をいったり暴れたりする)状態に
なる人もいるが、
オバァは「ここどこね?あぁ、手術おわったんだねー」と冷静に現状を把握している。
手術後のドレーン(お腹から出ている浸出液を体外に出す管)を引っ張る事もなく
自分に何が起こって何がされているのかをしっかりと理解されていた。
夕方に孫嫁が面会に来た。そのお嫁さんに
「この人(私の事)にお世話になったから、家からキーホルダー持って来なさい」
と!!!
「あんた、何時まで仕事ね?」と私の勤務時間を気にしている。
「朝の9時までですよ」とお伝えすると、
「じゃぁ、明日の8時までに持ってきて!」と命令しているのです。
えぇぇぇー、患者さんから物を頂いてはいけない決まりになっているし
しかも、面会時間外に届けさせるなんて!!!!
お気持ちだけでいいですよ、とお断りしたのですがオバァは絶対に持ってこい!
とお嫁さんに念押ししていました。
そこで、お嫁さんが病棟を出る時に持ってこなくてよいですよと説明したのですが
「オバァは一旦言い出したら聞かないんですよ、
持ってこないとずーっと覚えていて大変なので、明日持ってきますね」
とにっこりお話されて帰られました。
翌朝、お約束通りお嫁さんが仕事前に病院に寄って私にキーホルダーを手渡して
くださいました。
オバァは90歳すぎてから、このキーホルダーを作り始めた事。
ペットボトルの蓋ひとつひとつにマジックで色を塗って
太鼓柄の紙とつまようじで作ったバチをくっつけて作っていること。
中にお守りの塩が入っていること。
カジマヤ―(97歳)のお祝いで家族、親戚、知り合いに配っていたこと。
最近は少し手元がおぼつかないので、長男がお手伝いして作成していること。
オバァに影響を受けて、
お嫁さんもビーズでゴーヤーのキーホルダーを作っていること。
等々、キーホルダーと一緒に素敵なお話を聞かせてくれました。
翌日、オバァは元気に病棟へ転床して予定通りに退院していきました。
私の個人的見解、
90歳を超えて歩けている方は
適度にわがままで、自分の意思をしっかり主張できる人
家族を大切にして、家族からも大切にされている人
認知症もなく、しっかりされている方が多いと思う。
あ、後しっかりご飯を食べる人!(肉好きなオバァ多い)
こんなオバァを見ると幸せな気分になるし、すっごく憧れる!
自分のわがままを通しながら、家族に愛されてるってサイコーじゃな
い?
『わがまま愛されオバァ!』私の目標だなぁ~
病院に内緒でもらったキーホルダーを見るたびにオバァを思い出す。
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